「夜の森に耳を澄ませて」 〜天然記念物シマフクロウの生息域を探る音響調査〜

マイクロホンアレイを活用した環境にやさしい生態調査

夜の森にひっそりと生きるシマフクロウ。その姿はなかなか見られませんが、鳴き声を頼りに生息場所を探る「音源定位法」という音響センシング技術があります。これは、森に複数のマイクを設置し、録音した鳴き声の方向を計算することで、シマフクロウがどこにいるかを推定する方法です。これまでは、人が森に入り鳴き声や姿を観察する方法が一般的でしたが、「音源定位法」は、人が長時間森に入る必要がなく、人間に敏感なシマフクロウへの影響も少ないのが特徴です。実際の調査では、わずか20分の機材設置で、従来の人による調査(約120分)よりも高い精度で生息範囲を把握できました。この技術は、自然環境に配慮した調査手法として効果的といえます。

↓再生するとシマフクロウの声が聞けます

音源定位解析AIが拓く希少鳥類との共生社会

今後の方向性としては、音源定位技術をさらに高度化し、シマフクロウをはじめとする希少鳥類の生息状況をより正確かつ効率的に把握できる体制を整えることが目標です。具体的には、録音された膨大な鳴き声のデータに対して、AIによる自動識別精度の向上や、マイクロホンアレイの設置・運用の省力化を進めることで、調査の常時化・広域化を目指します。また、得られたデータを地理情報システム(GIS)と連携させることで、生息域の変化を時系列で可視化し、保全活動の意思決定に活用できる仕組みづくりを推進します。人と自然が共に生きる未来のために、技術と知恵を結集した調査・保全の新たなスタンダードを築いていきます。