失われた湿原を未来へ:石狩川下流域の湿原再生プロジェクト
かつて石狩川下流域には、現在の釧路湿原を凌ぐ日本最大の湿原が広がり、多様な動植物の生息・生育地として我が国の生物多様性を支えていました。しかし、治水事業と農地開発により、流域の治水安全度が飛躍的に向上した一方で、かつて同地域に広がっていた高層湿原は大部分が失われました。高層湿原の再生において鍵になるのは、ミズゴケ群落等が成立するために必要な「常に湿っていること」、「酸性であること」、「栄養が少ないこと」という地下水環境の3つの条件を、安定的に維持することです。本取組では、夕張川幌向地区の自然再生を通じて、3つの条件を満たす湿原再生技術を確立し、魅力ある持続可能な地域づくりに向けた仕組みへと発展させています。

流域をひとつの“グリーンインフラ”に
本事業のモニタリングにより、水位深度0.2m以浅、pH5以下、EC120μS/cm以下の地下水条件を満たすことで、高層湿原の生育基盤を整備できることが確認されました。しかし、生育基盤を整備だけでは高層湿原は創出できません。地域固有種の導入や外来種対策など、継続的な維持管理が必要です。
本取組では、ミズゴケ里親制度や体験型イベント等の実施、湿原再生ガイドブック等の活用を通じた担い手の育成を継続し、「湿原の整備・保全」から「湿原の活用・継続」へと移行するため、地域主導によるステークホルダー連携の取組へと発展させています。これにより、流域一体となったグリーンインフラの取組を推進し、北海道の特性を活かした自然共生社会の実現に向け、魅力ある地域づくりに取り組んでいます。